縁から広がる世界。トマト農家の小林さんが語った「農業女子、ブランディングにめざめる」|図書館×福知山の変トークセッションVol.3レポート
2023年7月に、京都府福知山市の図書館でトークセッションが行われました。
テーマは、「農業女子、ブランディングにめざめる」。女性農業者をつなぎリードする存在として活躍する、トマト農家の小林加奈子さんに登壇いただきました。聞き手は、コンサルタントとして小林さんを創業時から支える、福知山産業支援センタードッコイセ!bizセンター長の西山周三さんです。
そのトークの一部を、お届けします!
いろんな農作物を作っていることは「特徴じゃない」
小林さん:私が代表取締役を務める小林ふぁ〜むは、2018年に夫と二人で立ち上げた会社で、野菜やお米を作って販売しています。最初はなかなか上手くいかなくて、ちゃんとブランディングを進めていきたいと悩んでいた時、市内にドッコイセ!biz(福知山産業支援センター)ができると聞いて。2018年のオープン時にすぐ相談に行きました。
西山さん:小林さんは10番目くらいの相談者で、早かったですね。面談のなかで、小林さんだけじゃなく農家さんの特徴として、よく仰ることがあるんです。それは、「いろんな農産物を作っていることが特徴です」ということ。それは特徴じゃないのでは? と。それで小林さんに「一番作りたいものは何ですか?」と聞くと、「トマト」って答えられたんです。
小林さん:トマトは夏になったら一気に完熟するんですが、当時は販路もなくてたくさん余るんです。それを加工して試しにつくってみたジュースを、面談の最後に「こんなのもあるんです」とお見せしたら、西山さんが「これですよ! これを推していきましょう!」と言ってくださったんです。初めての味方でした。
ポイント① 行動が早い
西山さん:トマトジュースの定義って、僕の中では濃縮したトマトに水や塩分などを加えて混ぜたものだったんですけど、小林さんのジュースは違うんですよね。
小林さん:私自身、トマトジュースが苦手で全然飲めなかったのが、うちのジュースだけは飲むことができたんです。何が違うんだろう…と思った時に、トマトの果汁だから飲めるんだろうなと。それで、何気なく私がつけていた名前「とまとのじゅ~す」の「の」が大事なんだ!と西山さんが仰って。
西山さん:この「の」があることで定義づけができて、トマトジュースとの違いを伝えられる、ということを僕からは言わせてもらいました。小林さんはそこからの動きが早かった。「行動が早い」っていうのは、ビジネスの大事なポイントのひとつです。
ポイント② どこに売りたいのかを明確にイメージ
小林さん:私は最終的には、飛行機のファーストクラスで提供されるようなジュースにしたかったんです。といってもまずは売るならスーパーかな? と思っていたんですが、西山さんが「このジュースは違う」と。「届けたい人に向けて販売できる場所を探さないといけないよ」と言われました。
西山さん:小林さんのビジョンに向けて、ブランディングを進めていったんです。「どこに売りたいのかを、明確にイメージする」ことは、ふたつ目の大事なポイントだと思います。
豪雨被害をまぬがれた、わずかなトマトで・・・
西山さん:とはいえ、ビジネスをしていく上では、山も谷もあります。小林さんも早々に谷を経験されましたよね。
小林さん:はい。2018年7月の西日本豪雨で、うちは被害にあいました。これからトマトのジュースをつくって売り出していこうとしていたのに、畑に土砂が流れ込んで、収穫の2日前にトマトが全部ダメになってしまったんです。
西山さん:私も同じものづくりをしている者として、鮮やかな畑が一瞬にして真っ黒になったのを想像すると……どん底に落とされたと思うんです。
小林さん:途方にくれたんですけど、次の日、友達が「1個でも2個でも水害にあわなかったトマトがあるはずだから、一緒に収穫しましょう」と言ってくれて。被害をまぬがれたわずかなトマトを友達と収穫して、「とまとのじゅ〜す」第1号を完成させました。そしてそれだけを持って商談会に行きました。売るものがないのになんで行くねん、ですよね(笑)。でもそこで髙島屋さんに出会って、ジュースを置いてもらえることになったんです。
西山さん:熱意がやっぱり通じているわけですよ。何もしないより、動くことが大事ですよね。でも僕も背中を押しましたが、まさかいきなり決まって帰ってくるとは思わなかったです(笑)。
販路の次は、小林さん自身をブランディング
小林さん:次にしたことは、京都府が主催する女性起業家対象のビジネスコンテストへの応募です。でもプレゼンなんて人前でしたことがなかったので、プレゼン練習が大変で……。
西山さん:小林ふぁ〜むのブランディングを進めていくときに、次は代表の小林さんをアピールしましょうとなったんですよね。僕がプレゼンの練習相手を務めましたが、7分の発表なのに、最初は15分くらいしゃべっておられました(笑)。
小林さん:「とにかくポイントとなる言葉を絞って、一番言いたいことだけを伝えてください」と西山さんに言われて。プレゼンのスライド内容を全部読まずに、ポイントだけを伝える練習を繰り返しました。結果、近畿経済産業局長賞をいただけんです。
西山さん:小林さんも味を占めたのか(笑)、2つ目のコンテストにもすぐ挑戦されましたね。
ポイント③ 縁を大切にする
小林さん:2021年には、関西の女性起業家のビジネスコンテスト「LED関西」に出て、オーディエンス賞をいただきました。同じファイナリストのみんなとは、今でもLINEグループで情報交換したり、何ヶ月かに1回集まってみんなの話を聞いて刺激をもらっています。私が新しいブランド「Nora dish 奥京都」を立ち上げる時にも、この時のファイナリストであるコピーライターの方に手伝っていただきました。
西山さん:ここ、結構重要なポイントだと思います。事業をしていく上で大切なこととして、それこそスティーブ・ジョブスとかも「縁を大切にする」と言っているんです。3つ目のポイントです。
小林さん:以前は私は何でもひとりでこなすタイプだったのですが、やっぱり水害にあったことがきっかけで自分の力の限界というのをひしひしと感じました。その時にたくさんの方に応援してもらって、素直に受け入れたことで、今まで見えてなかった世界が一気に広がったんです。縁を大切にすることで、叶わなかったはずの夢がどんどん実現するんやな、って実感しました。
西山さん:僕が20年くらい経営者をしている中でも、縁を軽視してうまくいっている人は見たことがないですね。
小林さん:異業種・同業種限らず、何か一緒にするわけじゃなくても、仲間がいるだけで心強いし、前に1歩踏み出せるんですよね。最初、私は移住者でつながりもないし、ひとりで解決しないといけない状況だったけど、これから新しく農業を始める方にはグループが絶対必要だなと思って。2020年に福知山・綾部・舞鶴で1次産業に携わる女性グループのらXたん ゆらジェンヌ を立ち上げたのも、そんな思いからです。
縁から生まれた、野菜の帽子
小林さん:頭の上を何で飾ろうかすごく迷いました。でもやっぱり農業女子のメンバーの育てている野菜をいっぱい頭に飾りたいなと思って、水害の時に助けてくれた友達がつくる「野菜ブーケ」を思い出したんです。
小林さん:その友達やゆらジェンヌのみんなに力を借りて、野菜の帽子をつくりました。ぜひ野菜を1個1個見てください。種類も違うし色とりどりですし、ナスの形に至っては全然まっすぐじゃなくてクルクルしてるし、もう本当に個性豊かな野菜ばっかりで。それがこうやって集まることで素敵な帽子になりました。
小林さん:これはまちも同じだと私は思っていて。ひとつのまちの中に自分らしく個性豊かに生きている人たちが集まっている。それで素敵なカラフルなまちになっていくのかな、なんて思っています。
みなさんにメッセージ
小林さん:福知山はまだまだ女性や若い人たちが活躍する場が少ないですが、そんな中でも、最近は若い女性が活躍することも増えています。どんどん活躍してもらうためには、まわりからの協力が絶対に必要になってきますので、みなさんのまわりでがんばっている人がいたら応援してあげてください!
西山さん:どんな人でも強みや特徴を1つは持っています。それをサポートして引き出して形にすることが、僕たちドッコイセ!bizの仕事です。何も分からない、という人でも、何でも解決してみせますので、気軽に来てください!
*ドッコイセ!bizは、福知山駅前の市立図書館中央館の敷地内にあります。相談は何回でも無料です!
[次回] テーマは「地域×クリエイティブ」
図書館×福知山の変トークセッションVol.4
8月25日(金)20:00~キャンプライフクリエイターの岩城四知さん、聞き手にクリエイティブディレクター/コピーライターの公庄仁さんをお迎えして、「クリエイティブで、まちを変えていく」をテーマにお話をお聞きします!どちらも現地観覧・Instagramライブ・関連イベントあり。詳しくは公式HPへ。
◆「福知山の変」とは、挑戦する人を応援するシティプロモーション企画です!詳しくは福知山市HPへ
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