お試し住宅での滞在で「福知山で暮らす心地よさ」を知る|あなたと、福知山と、田舎の移住体験型シェアハウス
今、この記事を読み始めてくれている皆さん。きっと「福知山ってどんなところなんだろう」と興味を持ってくれているのではないでしょうか。例えば「今度旅行で訪れてみたい」「故郷が福知山だ」「いつか田舎暮らしをしてみたい」などなど。興味のベクトルはきっとそれぞれ。
本記事では、そんな方にこそぴったりな、ゆるやかに地域と関われる取り組みをご紹介します。
観光客以上、定住者未満。例えば都会に住みながらも、週末は福知山のイベントに参加したり、畑を借りて農業に励んでみたり。移住せずとも、地域や地域の人々と多様に関わる方法はたくさんあります。
今回の記事では、福知山での暮らしをお試し体験できるシェアハウス&ゲストハウス「Wぴーす」の堀代知(だいち)さんにお話を伺いました。
Wぴーすは、2週間から最長1年まで滞在することができる「移住体験型シェアハウス」、そして観光などの目的で1日から宿泊できる「ゲストハウス」の2パターンで滞在することができます。
「移住体験型シェアハウス」は福知山市や地域と連携して運営しており、移住を検討している人、田舎暮らしを体験してみたい人などがお試し滞在することができる場所です。
Wぴーすに滞在したことで、移住を決めた方も。Wぴーすでは、どのような体験ができるのでしょうか。
地域の方とのつながりを大切に
取材に訪れた7月、Wぴーすのある六人部(むとべ)地区には青々とした田んぼが広がっていました。敷地内に入ると大きな庭があり、建物はどこか懐かしい…いわゆる「田舎のおばあちゃんの家」を思い起こさせる佇まい。それもそのはず、ここはWぴーすを営む堀さんの祖父母の住まいだった場所。
Wぴーすには5つの部屋があり、うち4部屋はシェアハウス、1部屋はゲストハウスとして運営しています。
「ゲストハウスは民泊として運営しているためどなたでも宿泊可能ですが、シェアハウスはお試し移住を目的にしているので、福知山在住ではないUターン、Iターンの方向け。例外もありますが、最長1年までという条件が決まっていて、オンラインか対面でしっかりとお話をさせてもらってから入居を決定しています」
シェアハウスに入居すると、必ず行うのが近所の挨拶回り。住人の名前や顔を覚えてもらうことで、地域の方も住人もお互いに安心して生活することができます。
「うちは海外の方が住むこともあるので、入居者が事前に挨拶をしておくと地域の方も安心できるかなと。挨拶回りに行くと、お野菜をいただく事もあって入居者は初日から地域の方の優しさに触れて驚いています(笑)」
こうした地域との密なコミュニケーションを行うのも、移住したばかりのときに苦い経験をしたからこそ。
「最初にご指摘を受けたんですよ。定住するかまだ決めてなくて、近所へ挨拶回りに行けていなかった。そしたらたまたま外でご近所さんにバッタリ会って『隣にどんな人が住んでるかもわからないのは、お互い気持ちよくないでしょ』って注意してくださって。ハッとして、急いで手土産を持って挨拶に行きました。今では大の仲良しですよ!」
Wぴーすを始める半年前には、当時の自治会長からのアドバイスで、住民向けの説明会を開くことに。
「自治会長さんが、人を集めてあげると皆さんに声をかけてくれました。さらに住人の方へどのように伝えたらよいのかなどのアドバイスもくれました」
その頃、廃校を活用したいちご観光農園『THE610BASE(ムトベース)』ができるなど、地域が一丸となってまちを活性化しようとする動きができていた頃でした。
「地域の皆さんからの心配事もお聞きして、きちんと解決策を示したことで安心してくれたみたいです。『俺らでは絶対にできないことやから、むしろ頑張ってくれ』と多くの方が応援してくれました」
職をなくしてたどり着いた祖父母の家
京都市出身の堀さんが六人部に住み始めたのは、2021年。コロナ禍によって仕事を失ったことがきっかけでした。建築士、ヒッチハイクで世界一周、大阪で不動産会社設立というユニークすぎる経歴を経て、軽井沢町で人力車を引く仕事をしていた時のこと。
コロナ禍によって観光業は打撃を受け、人力車の仕事がなくなりました。同じく軽井沢のカフェで働いていた妻の可奈さんも仕事を失いました。しかもその時、2人は入籍したばかり。そこで、祖父母が亡くなってから空き家になっていた福知山の家で生活することに。
「当時は仕事がなくて貯金を切り崩す生活だったので、空き家に住んだら家賃がかからんな、という気軽な気持ちで移住しました。その時はコロナが落ち着くまで住んで、また軽井沢に戻ろうかなと考えていました」
しかし、空き家に住み出してから、堀さんの父が京都市から毎月通って家の掃除をするなど空き家の手入れを続けていたことや、維持費を払い続けているけど今後のことが決まっていないことを知りました。
「何かいい方法はないかなと考えた時に、妻と『ここでゲストハウスとかシェアハウスをやってみない?』という話になったんです。僕も妻も海外でバックパッカーとして生活していたことがあり、いつか迎える側になりたいねって話していたんですよ。でもその時は『老後にできたらいいな』ぐらいの感覚だったんですけど、大きな家があって、職もない。じゃあ、やろうかって」
堀さんは、どんどん人口が減り、若者が少なくて困っているという地域の課題にも着目。ただゲストハウスをして人を受け入れるだけではなく、お試し移住を目的としたシェアハウスも運営することで、移住者の呼び込みにもつなげられるのではと考えました。
「ただのゲストハウスだったら、素性もわからない人が地域を出入りするだけ。それだと地域の方は受け入れ難いじゃないですか。僕たちもやりたいことができて、かつ地域がハッピーになるのが、お試し住宅という形のシェアハウスでした」
お試し移住を経験した入居者のストーリー
こうしてスタートしたWぴーす。これまでに、ムトベース内にあるクラフトビールの醸造所「Primary Barrels(プライマリーバレルズ)」で働く大西さんや、田舎暮らしに憧れて2週間だけ移住した兵庫県出身の女性、隣町の会社の寮に住んでいる方が数ヶ月限定で移住するなど、様々なバックグラウンドを持つ方がWぴーすを利用されています。近くの中学校で英語教師として働く、ナイジェリア人の女性が住んでいたこともあったそう。
「大西くんは、ムトベースに醸造家として就職して最初はアパートを借りてたんですけど、都会から来て知り合いもいないから、と入居してくれました。最近は大西くんのパートナーも移住してきて、一軒家をリノベーションして住んでいます。うちとは家族ぐるみの付き合いになりましたね。兵庫県出身の女性は2週間の間に当時入居していた男性と恋に落ちて、付き合ってるみたいですよ!」
なんとラブロマンスも生まれてしまう、Wぴーす。実際に入居している方の話を聞いてみたいと、ご紹介いただいたのが1年ほどWぴーすに住む中国出身のウ・カンさん。
日本在住歴は13年。これまで福井県や愛媛県に住み、就職をきっかけに福知山に移住しました。日本の田舎の原風景、そして古民家への憧れから空き家を探し、たどり着いたのが六人部でした。
近所に住んでいたこともあり、年末の餅つきやボードゲームなど、Wぴーすが開催するイベントに参加していたというウさん。急遽、借りていた空き家を退去せざるを得なくなり、以前から交流のあったWぴーすに入居することになりました。
「最初は知らない人同士で共同生活をする大変さもあったんですが、堀さんや可奈さんがいつも話を聞いてくれて、『こう伝えてみたらどうですか』とアドバイスをくれたんです。2人がポジティブな考えだから、自分も言い方を工夫して伝えてみようと思うことができました。自分もみんなも楽しいし、何よりそのおかげで自己成長できたんですよね」
ここに長く住みたいと思う理由は、堀さん夫妻。そしてそこからつながる人との縁。ウさんがこの場所を好きな理由がもうひとつありました。それはランニングの時に感じる豊かな自然。
「毎朝この周辺を走るんですが、本当に自然を近くに感じるんです。4月に入ったら緑の世界!浅い緑、濃い緑…映像などで見るよりもっと美しい自然を自分の目で見ることができる。ランニング友達は音楽を聞きながら走るみたいですが、私は何も聞かないです。風の音、稲穂が揺れる音、カエルの鳴き声…自然の声がめっちゃきれいだから。近所の方とすれ違うたびに挨拶をすると、心も温かくなります」
この場所で暮らして得たものは「クールな頭とウォームな心のつながり」というウさん。
「朝ランニングでリフレッシュして、会社に行くと忙しくてどんどん疲れちゃうけど、また翌朝元気をチャージできる。心が落ち着くと仕事も勉強もはかどるし、心の健康につながる。最初は何もないなと思ったけど、視点を変えれば人として豊かになれる場所なんですよね」
六人部に「家族」を増やしたい
Wぴーすが軌道に乗り、新たな展開として2024年4月からは家族でもお試し移住がしたいという要望に応えるべく、「一棟貸住宅3ぴーす」をスタート。この物件は堀さんの活動を見た方から空き家の利活用について相談があり、「堀さんになら譲りたい」と譲渡が決まった物件。お試し住宅としてだけでなく、1泊からゲストハウスとしての利用も可能です。
「この辺りには大人数で泊まれる場所があまりないので、GWやお盆休みにグループで泊まりたいという方々が利用してくれています。庭でBBQして、近所のムトベースでクラフトビールを買って、翌日は福知山観光をして帰る。ここをきっかけに福知山に関心を持つ人が増えたらうれしいなと思います」
Wぴーすをきっかけに、ゆるやかなつながりをつくる。実はWぴーすに住んだことをきっかけに5人の方が福知山に移住していて、堀さんは「六人部にもっと“家族”を増やす」ことを目標にしているそう。
「Wぴーすに一度入った方たちは、家族だと思って接してるんです。その家族が移住して、近所の空き家に住んでくれたら…どんどん六人部が楽しくなるんじゃないかなって」
「ムトベースの大西くんのパートナーも最初、田舎に住むのは嫌やったらしいんですよ。でも遊びに来るたびに住人や地域の方たちとも仲良くなって、六人部だったら住みたいと思って移住してくれたんです」
Wぴーすでつながった人たちが地域で暮らし、人が増えて、地域が元気になる。それが堀さんのめざす未来。
今度はどんな人がWぴーすに住み、堀さんたちの「家族」となるのでしょうか。気になる方はぜひ福知山に来て、確かめてみてください。
ゆるやかに、楽しく福知山と関わりを持つことを始めてみませんか。
【移住促進ウェブサイト「FUKUFUKU LIFE」】
移住に関する詳しい情報は、下記サイトも併せてご確認ください。