福知山で伝えたい。どんな人でもトライできる「自分色のダンス」【福知山移住者インタビュー/まちなかエリア】
新型コロナウイルスの影響をきっかけに、働き方や暮らし方が多様化している近年。自らの生き方を見つめ直し、「移住」という選択をする人も増えています。福知山市でも、さまざまなバックグラウンドを持つ方が移住されています。
「福知山移住者インタビュー」では、福知山へ移住した方々に、暮らし、しごと、人とのつながりなど、どのようなきっかけで福知山を移住先に選んだのかをお聞きし、「移住者から見る福知山の魅力」を紐解いていきます。
今回は、兵庫県神戸市から福知山のまちなかエリアに移住された油利 加奈(ゆり かな)さんにお話を伺いました。
与えられた個性を生かす踊りを追求した20代
神戸市で生まれ育った油利さん。幼い頃から踊ることが大好きで、4歳からモダンバレエを習い始めました。高校生のときストリートダンスに興味を持ち、大阪のダンスの専門学校へ進学を決めます。
「卒業後はダンスイベントやコンテスト、音楽LIVE等に出演し、様々なシュチュエーションで精力的にダンスの活動を続けていました」
長く続けるうちに、少しずつ油利さんにとって「ダンス」に対する考えが変わっていったそう。
「主に音楽と共に、音楽を彩るように踊ることが多かったんですが、それに加えて身体表現にも様々な方法があることを知り、より自分らしく踊る方へ自然と惹かれていきました」
「それまでコンプレックスでもあった自分の身体も与えられた個性として捉え直し、踊りを通して"みんな違ってみんないい"を感じるようになりました」
次第にストリートダンスという枠組みを超え、仲間と共に自分たちのダンスを追求。
自主公演を幾度となく手がけ創作にも力を入れた活動をしていきました。
価値観を変えたボリビアの暮らし
ダンスに没頭する日々の中、ターニングポイントになったのは南米ボリビアでの暮らし。油利さんの妹が青年海外協力隊でボリビアに派遣され、その後結婚。現地で出産することになり、油利さんが手伝いに行くことになりました。
妹夫婦が暮らすのは、ガスも水道も通っていない森の中。朝起きたらまず近くの井戸で水を汲み、薪で火をおこしお湯を沸かします。もちろん洗濯機もないので手洗いで洗濯。買い物は同じ地域の住民に頼んで車に乗せてもらい、40分ほどかけて近くの街まで行かねばなりません。
「今まですべてが整った便利な環境で暮らしてきたことを実感しました。毎日想像したことのないことばかり起きて大変でしたが、何もない心地よさもあって。夜の森の静けさの中に鳥や動物の声が聞こえて、世界は人間だけじゃないなぁと感じたり」
「ダンスって、自分の考えや感情が反映されるもの。ボリビアで暮らす中で得た様々な気づきやこうした日常の質感をダンスで表現したいという気持ちが強くなりました」
ボリビアでこれまでを振り返った時、“自分らしい”ダンスを追求しながらも、華やかな舞台の上で踊る自分と日常の自分のギャップを埋められずにいたそう。
「上手く言えないけど、もっと日常とダンスの境界線が曖昧になったらいいなと思うようになりました」
子育てを機に福知山へ
ボリビアに1年ほど滞在した後帰国し、油利さんはダンサーの夫と結婚。第一子を出産し、神戸市内に住むことになりました。実家も近く、慣れ親しんだ暮らしのはず。ですが、子どもを育てるには不便だと感じることも多かったのだとか。
「車通りが多い道を歩いていると危険で目が離せないし、車の音で子どもが何を言ってるのか聞こえないことも。ボリビアの静けさを体感した後だからか、夜も鳴り響く救急車やトラックの音がやけに大きく聞こえて」
「何よりも子どもに『ダメ』って言ってばかりの自分が嫌だったんですよね。危ないからダメ、触ったらダメ。もう少し子どもが過ごしやすいところに行きたいと思ったんです」
2021年、2人目を妊娠したタイミングで夫の地元・福知山へ移住をすることに。実家の神戸には直通バスで1時間半、まちなかに住めば車がなくても生活できる。暮らしやすさも福知山へ移住を決めた理由のひとつ。
「移住してきてすぐに、福知山はリラックスして過ごせる場所だなと感じました。親子3人で歩いても人にぶつかることもなく、気兼ねなく歩ける。子どもといると病院やお店、道端でも地域の方がにこにこしながら話しかけてくれるんです」
「子どももたくさん遊ぶ場所があってのびのびしているし、私もダメ!って言う回数が減って心が楽になりましたね」
実は田舎暮らしに必須と考えられる車の免許を持っていないという油利さん。
時間があるときはお子さんを連れて、自転車で三段池公園へ。急勾配の坂道を一生懸命登った先に見える公園からの眺めに心が癒されます。
「私は車の免許を持っていないので、家から離れた場所に行くときは夫の車で移動します。それ以外はほぼ自転車での移動ですが、まちなかは近所に大きな公園や図書館など子どもと遊べる場所がたくさんあるので、自転車で十分生活できますよ」
子どもたちのお気に入りは、レッサーパンダもいる三段池公園RAVIHOUSE(ラビハウス)動物園(福知山市動物園)。北近畿では、唯一の動物園です。
「福知山市動物園は待ち時間もないし、動物と触れ合えたり、餌をあげたりできて人と動物の距離が近いので子どもたちはいつも楽しそうです」
日常の中にダンスを
子どもが成長するにつれ、少しずつダンスの活動を再開している油利さん。1年半前に兵庫県丹波篠山市のギネスダンススタジオで、インストラクターとして復帰しました。母となった今、表現したいことも変わってきているそう。
「1年半前に大人も子どもも参加できる『生音でダンス』というクラスをはじめました。ミュージシャンの音に合わせて色んなアイディアやヒントを基に踊ってもらうんですが、すごく楽しくて。自分が母になったこともあって、今は子どもたちとダンスや音楽を通して楽しむ場を大切にしていきたいと思っています」
そんな折、縁があって子どもと一緒に参加した福知山アートボランティア(以下/アートボランティア)。そこでのつながりは、福知山でのダンス活動のイメージを広げてくれるものだったそう。
「子育てと家事に追われている中でも、何かをしたいと思っていたところ、アートボランティアに出会いました。演劇や音楽などのイベントの裏方スタッフとして参加することで、自分が刺激を受ける部分もあったし、子どもにも制作の裏側を見せられる貴重な機会になりました」
子連れで参加できることも、アートボランティアの嬉しいところ。
「ボランティアの参加者の方たちが子どもに声をかけて遊んでくれたり、一緒に見守ってくれてるような安心感がありました。参加者の中には芸術に関心が高い方もいて、私がダンスをしていると話すと『一緒に何かしたいですね』と声をかけてくれる方もいました」
今後は福知山でも、もっとダンスを通じて活動していきたいと考えているそう。その根本には「ダンスはどんな人にも開かれているものだと知ってほしい」という想いがあります。
「ダンスって特別なことに思われがちで、一緒に踊りましょうって声をかけても『私は運動が苦手で、リズム感がないから…』と断られることも多いんです」
「でもダンスってその人の生きているエネルギーが感じられるもの。自分のカラダの声に耳を澄ますことでもあれば、カラダの感覚を味わうことでもある。色んなダンスがあって。本来は誰でも皆踊れると思っています」
もっと多くの方にダンスに触れる機会を届けたい。現在は、福知山のオクムラ楽器で月一回の定期クラスや、特別支援学校や児童館等で子ども向けのワークショップを開催するなどの活動を行っています。
「遊びながら音と踊りに親しめる自由なダンスの時間にしています。踊るアイディアとかヒントを伝えて、何だか踊りになってきたかも?を楽しんで頂けるように。それぞれの個性が生きる時間にしたいですね」
神戸からボリビア、そして福知山へ。暮らしによって変化する油利さんのダンス。
油利さんを通じて、福知山にダンスの輪が広がっていくかもしれませんね。
記事を読んで福知山での暮らしに興味を持った方はぜひ、「福知山暮らし体感ツアー」にご参加ください。
参加者の方の希望に沿って、その地域に暮らす移住者や地元の方からお話を聞いたり、移住についての不安や疑問などを市の職員に質問していただくなど、福知山の暮らしをもっと深く知ることができますよ。
【移住促進ウェブサイト「FUKUFUKU LIFE」】
移住に関する詳しい情報は、下記サイトも併せてご確認ください。