道づくりは人づくり ~自伐型林業で将来の移住者のために新しい仕事をつくる~【福知山市 移住者インタビュー/今西崇さん】
自伐型林業との出会い
移住定住サポートセンターでは、しばしば林業移住を希望する人からの問合せを受けることがあります。そんな時、真っ先に紹介するのが、今回の主人公タカシさんです。
タカシさんは2017年に、自然や星空の美しさで有名な福知山市夜久野町にある伯父の家に住み始めました。その後、夜久野みらいまちづくり協議会主催の移住者交流会に参加したことがきっかけで、同協議会の活動に参加するように。現在、夜久野町が直面している課題(人口減少、若者の流出、耕作放棄地など)に触れるなかで、自分も何か役に立ちたいと考え始めたそうです。
そんなタカシさんの心をつかんだのが夜久野の森林でした。林業について調べていくうちに「自伐型林業」のことを知り、奈良県の下北山村や地球のしごと大學で自伐型林業の体験研修に参加するなど、すぐに行動を起こされました。
体験研修が終わって、タカシさんは、2020年春に地元の森林組合に就職し、山仕事の心構えを教えてくれた大切な師匠にも出会いました。
ところが、夜久野の森林を何とかしたいと思う反面、仕事の現場は夜久野以外の場所が多かったそうです。
2021年5月、タカシさんは大きな決断をします。
自伐型林業において必須の道づくり(林業の作業道づくり)の技術を学ぶため、森林組合を離れ、福井市での長期研修に参加することに。
その後、夜久野に戻って個人で山を借り、地域の方の協力を得て資金を確保。研修で出会った道づくりの師匠と一緒に山を歩き、助言を受けながら道づくりに取り組み始めました。
「道づくり」は「人づくり」
タカシさんの話を聞くなかで、最も印象的だったのは、「道づくりは人づくり」という言葉でした。
自伐型林業において、一番重要なことは「山のどこに道をつくるか」だそうです。山を壊さない道づくりができる人が地域に増えれば、その道を使って長く自分たちで適切に山を管理できる。山の管理を通じて地域の人との信頼関係ができ、防災や生態系の維持など環境保全にもつながる。それが、タカシさんが考える林業を通じての夜久野への地域貢献のかたちだそうです。
道づくりは自伐型林業の核であると同時に自伐型林業への入口でもある。木を切るだけが林業ではないとタカシさんは話します。
はじめは林業の知識や技術が足りなくても、わかっている人やできる人の助けを借りながらであればやっていけます。「最初はできないことはできる人に任せて、一緒に活動をするなかで、経験やスキルをわけてもらえばいい」「林業をもっと身近にしたい」と語ってくれました。
夜久野で起きている小さな変化
タカシさんの活動と歩調を合わせるように、福知山市でも2022年度に自伐型林業研修を実施するなどの取組が始まりました。これらをきっかけに、夜久野に自伐型林業に興味のある人が市外からも集まり始めています。
こうした動きの中、タカシさんも自分と思いを同じくする仲間を増やしたいと活動を続けていますが、夜久野で自伐型林業を根付かせるにはまだまだ課題は多いとも感じているそうです。
タカシさんの今後の目標は、自身の技術を磨くことと、地域や行政、移住者などと一緒に自伐型林業が地域の仕事として収益を上げられるように仕組みづくりを行っていくことです。自分の活動を通じて、30年後に夜久野に移住してくれる人のための仕事をつくりたいと仰っていました。
タカシさんによると、森林は、林業以外にも、森林セラピーなどのツアーやスポーツアクティビティなど、余暇活動や、つながりづくりの場として活用できる可能性があるといいます。
近い将来、地域の人も、移住者も、それぞれの興味に応じて夜久野の森林に触れる機会が増え、夜久野で森林を使って面白い活動ができたら、夜久野はこれからワクワクする地域になると感じました。
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