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1000年先も豊かな森であるために。森と人の新たな関係性を築く|あなたと、福知山と、森林レンタル

今、この記事を読み始めてくれている皆さん。きっと「福知山ってどんなところなんだろう」と興味を持ってくれているのではないでしょうか。

例えば「今度旅行で訪れてみたい」「故郷が福知山だ」「いつか田舎暮らしをしてみたい」などなど。興味のベクトルはきっとそれぞれ。

本記事では、そんな方にこそぴったりな、ゆるやかに地域と関われる取り組みをご紹介します。

観光客以上、定住者未満。例えば都会に住みながらも、週末は福知山のイベントに参加したり、畑を借りて農業に励んでみたり。移住せずとも、地域や地域の人々と多様に関わる方法はたくさんあります。

今回の記事では、「森林レンタル forenta」や「もくもくフェスタ(現・もくフェス in中丹)」など、森と人との距離を近づけるプロジェクトを行う、伊東木材株式会社(以下:伊東木材)の伊東 昌紀さん、禾緒里かおりさんご夫妻にお話を伺いました。

お二人はどのようにしてまちを活性化し、地域と人をつなぐ関わりを生みだしているのでしょうか。

【プロフィール】伊東木材株式会社・伊東 昌紀さん、禾緒里さん
初代が1902(明治32年)年に林業、製材業、建築請負業を開始。1975年より、昌紀さんの父、宏一さん(現会長)が代表取締役に就任。4人の兄弟の末っ子として生まれた昌紀さんは、岐阜県で江戸時代から続く林業家のもとで修行したのち、2007年に家業へ戻る。現在は、取締役、山林部部長として主に伐採、森林管理などを担当。妻の禾緒里さんとともに、「森林レンタル forenta」や「もくもくフェスタ(現・もくフェス in中丹)」など森と人との距離を近づけるプロジェクトを行う。

森の中に私だけの秘密基地「forenta」

小雨がしとしとと降る中、福知山市大江山にある森に向かいました。電波も入らない静かな森の中、雨音、鳥や虫の声しか聞こえません。

大江山は国定公園に指定されており、山頂からは若狭湾、丹後半島などの美しい景色を見ることができます。

この場所は、福知山市で林業、製材業などを営む伊東木材が管理しており、キャンプなどのアウトドアを楽しみたい人に向けて森林をレンタルするサービス「 forenta(フォレンタ)」として活用されています。

現在(2024年9月)12の都道府県にあるforentaですが、ここが西日本で初めてできた場所です。

(提供/伊東木材)

レンタルする場合は、内覧会に参加して「こもれびエリア」「遺跡エリア」の2つのエリアの中から好きな区画を選びます。

契約期間の1年(真冬は積雪により利用困難)は予約なしで好きな時にキャンプができることから、主に関西の都市部に住むキャンパーに人気が高く、常に満室状態。毎年、区画数を増やしながら少しずつ拡張しています。

昌紀さん「『この木でハンモックしたい』『グループでテントを張るので広い区画がいい』など皆さん自分のお部屋みたいに森を選んでいますよ。
最初はテントを張る場所の草刈りをしたり、枝葉を片付けたりと大変なんですが、手をかけるほどに愛着が出てくる。自分の秘密基地が持てるみたいで嬉しいと話してくれています」

禾緒里さん「私たちも子どもの友人家族を誘って、2泊3日で宿泊してみましたが良い経験になりました。電波も届かない、人工の音が一切しない、明かりもないから夜は木の影が濃いんです。
星が本当にきれいで、感覚が研ぎ澄まされるってこういうことかと思いました。
子どもたちも普段はYouTubeやゲームで遊ぶんですが、何も無い森の中ではノコギリで集中して何かつくったり、川で遊んだりして、退屈することなく過ごせていました。私たち親もSNSから離れ、デジタルデトックスができました」

(提供/伊東木材)

利用者の方たちも福知山の広大な自然と、自分や家族だけで思い思いに過ごせる空間が気に入り、7割近くの人がリピーターとして契約を継続しています。

都市部の方だけではなく、福知山市や綾部市など近隣に在住の方も利用しているそう。

禾緒里さん「尼崎から通っているご夫婦は、天候があまり良くない日はデイキャンプだけして民宿に泊まるなど、この場所を拠点にして奥京都(京都北部)を観光していらっしゃるようです。
この場所から地域とつながってくれたら嬉しいですね」

100年前の人から受け継いだ森を継承していく

forentaは「誰もが気軽に過ごせる森をつくりたい」という思いのもと、岐阜県東白川村で始まったサービス。伊東木材が管理する森もフランチャイズとして登録されています。

明治時代から林業を生業とする伊東木材の四男として生まれた昌紀さんは、「もっと森を活かせることがしたい」という思いを抱えていました。

昌紀さん「昔は炊事をするために薪を使い、家を建てるためにヒノキや杉を使い、木は生活に欠かせない存在でした。山は価値のある財産で、木を何十年か育てれば大きなお金になりました。
でも僕がこの仕事を始めた頃は木材価格が下がり、木を伐り出す方がお金がかかってしまうため、手つかずで荒れた状態になっている山が市内にもたくさんありました。
世代が変わるとどんどん山への関心が薄れ、代々所有している山の場所もわからなくなって、固定資産税の通知で初めて山を所有していることを知る。そんな方も少なくありません」

(70~80年前の社員集合写真/提供:伊東木材)

林業を間近で見てきたからこそ、その現状を痛いほど理解していた昌紀さん。それでも家業を継ごうと思ったのは、父の影響が大きかったそうです。

昌紀さん「父親が晩飯のときにいつも『この仕事はいいよ!』って、木とか山に対する愛を語り出すんです。刷り込み詐欺ですね(笑)でも実際にやってみるとすごく面白かった。100年前の人が植えた木を100年後の僕たちが切って、それが今使われていく。昔の人から受け継いだ技術を僕たちが継承していくべきやなと思ったんです」

こうした思いもあり、大江山を舞台とした福知山市の「福知山千年の森」プロジェクトにも参画。福知山を含む奥京都で放置されて荒れたままになっている森林の整備や植林などを進め、豊かな森づくりに林業部スタッフ全員で励んでいます。

昌紀さん「戦後に植えられた木が育ち、今は伐る時期なんですが同時に育てる時期が始まっています。
50年後にはまた繰り返す。1000年先も豊かな森であるためには、林業以外の視点でこれまで山とは縁がなかった方でも関われることを見つけたいと思っていて、その一つが forentaだったんです」

禾緒里さん「はじめにforentaを始めた場所は材木としては使いにくい広葉樹が多く、林業的に言うと利益が出る場所ではなかった。
でも、林業以外の一般の視点で見ると、居心地の良さそうなとても素敵な森が広がっていました。forentaとして活用することで、新たな山の価値を見出せたんじゃないかな」

森と人をつなぐ取り組み

(提供:伊東木材)

他にも、山や森と関われる機会を増やしていこうと、10年ほど前にお隣の綾部市でスタートしたのが「もくもくフェスタ」です。

昌紀さん「当時、綾部市には木材市場があって、木材の競りをやっていました。でもだんだん高齢化で林業を辞めていく方が増えて、木材の需要も減り、活気がなくなっていったんです。
そんな折に木材市場の10周年記念で何かイベントをしようという話が持ち上がったんです。父が市場の会長をやっていたこともあり、僕達に相談してくれました」

この機会に木材の面白さ、林業のかっこよさを多くの方に伝えたいと、様々なコンテンツを企画しました。

提供:伊東木材

禾緒里さん「少しでも林業の面白さを知ってほしくて、普段は見れない木材の競りや、子どもたちにはツリークライミングを体験してもらったり、林業のはたらく車を見てもらったりしました。
丸太の早切り競争、10キロぐらいの切り株投げなど木と触れ合う機会も設けたり。地元産の食材にはこだわって、お声がけする出店者様をセレクトしていました。」

提供:伊東木材

苦労の甲斐あって、初回は2,500人ほどの人が来場。最初は1年だけのつもりが評判が良く、その後2016年まで4年ほど開催することに。

そのノウハウを活かし、2023年からは京都府中丹広域振興局が主催の森林・木材PRイベント「もくフェスin中丹」のイベント受託者として企画や飲食店のセレクションなどに関わっています。

もくフェス in 中丹 
開催日:2024年11月4日(月・休)
場所:福知山市三段池公園
詳細は公式Instagramをご確認ください。
https://www.instagram.com/mokufes

他にも、福知山市の市立小中学校で使用されている「環境配慮型学校給食食器」にも携わっている伊東木材。福知山市とパナソニックグループが共同開発したこの食器は、伊東木材が伐採した間伐材を原材料としています。

昌紀さん「これは、木を粉まで粉砕したものと樹脂を混ぜてつくられているのですが、学校で食器として使われるものなので虫や異物が入らないようにとか、樹皮はくようになどの細かい指示があって、かなり大変でした。
でも子どもたちが『いつもの給食の味よりおいしく感じた』と言っていたと聞いて、やってよかったなと思いました」

▼間伐材を活用した学校給食食器
〇伊東木材 Instagram
https://www.instagram.com/p/Cw2VvioB4AN/?igsh=MWF2emZvaXlqc2U5ZA==
〇福知山市HP
https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/site/kyouiku/59063.html

移住者が林業の担い手に

こうした独自の取り組みに注目が集まったことが功を奏してか、以前は困っていた採用も年々応募者が増え、現在は20、30代の若いスタッフも多く在籍しています。しかも半数近くが京都、大阪など都市部からの移住者です。

禾緒里さん「夫は福知山で生まれ育ってるので、休みの日は都会に行きたいタイプ(笑)でも移住してきたスタッフたちは、休みの日も山に入って釣りをしたり、古民家に住んで鶏を飼ったり…田舎暮らしを堪能してますよ」

昌紀さん「生活の利便性を求める子には、福知山の市街地を勧めています。田舎暮らしもアパート暮らしもどっちも選択できるのが福知山の良いところ。
結婚して子育てする環境としても整っているじゃないですか。改めてバランスが良い土地だなと思います」

実は禾緒里さんも、奈良県からの移住者。大阪で生まれて奈良で育ち、仕事で東京、京都市内に住んだ経験も。田舎も都会も暮らした経験がある禾緒里さんから見ても、福知山は特別なのだそう。

禾緒里さん「福知山に来てびっくりしたのは食。スーパーで買った刺身も知人からいただくお米も、なんでこんなに美味しいの!?って驚きました。
海も山も近いこともあり、高いお金を出さなくても美味しいものが手に入る。しかもコンパクトなまちだからこそ、自分がやりたいことに挑戦しやすいんです」

昌紀さん「何かやりたいことがあればすぐに情報が入ってくるし、知り合いのつながりから協力者を探すこともできる。forentaにしても、もくフェスにしてもそれがあるからやってこれてるなと思います。
今後も森林の活用などを積極的に行いながら、森を面白く活用できる方法を模索していきたいです」

林業家として森を育む活動を行いながらも、林業の枠を超えて人と森の接点を増やす取り組みを積極的に行う伊東さん夫妻。現在の取り組みがどのように広がり、実を結んでいくのか楽しみですね。

福知山市では、森や木について知ることのできるイベントや施設があります。
記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ訪れてみてください。

「やくの森フェスタ」木材と触れる2日間!!
開催日:2024年9月21日(土)、22日(日)
場所:夜久野ふれあいプラザ一帯
URL:https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/64/68543.html
主催:福知山市

やくの木と漆の館
福知山は、数少ない国内の漆産地のひとつ。「丹波漆」(たんばうるし)と呼ばれ、職人による生産技術は京都府の無形民俗文化財に指定されています。
やくの木と漆の館では、漆(うるし)の絵付け体験から、器の表面に細い筆を使って漆で絵を描く蒔絵体験など、希少な技術を体験できる工房があります。他にも漆に関する道具、歴史、本などの資料室があり、漆器を購入することもできます。
URL:https://www.kyoto-kankou.or.jp/info_search/9698

大江山酒呑童子の里
大江山鬼瓦工房、童子荘、大江山グリーンロッジ、日本の鬼の交流博物館を始め、キャンプ場、バーベキューハウスなどの野外活動施設、グラウンド、全天候型テニスコートなどのスポーツ施設が整備されています。
春は新緑の中での森林浴、夏は渓流釣りや昆虫採集、キャンプが楽しめます。秋は雲海を眺めながらハイキング、冬は雪遊びと、自然の中で四季の楽しみを味わうことができます。
URL:https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/65/1084.html

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福知山暮らし体感ツアー
日 時:
参加者と調整
内 容:移住するにあたって知りたいこと、移住する際の希望(①子育て②農のある暮らし③まちなか暮らし)などを参考に、市職員が福知山市をご案内します。
参加料:無料(福知山までの交通費、食事代・体験料などは自己負担となります)
▶︎福知山暮らし体感ツアーのお申込みはこちらから

【移住促進ウェブサイト「FUKUFUKU LIFE」】
 移住に関する詳しい情報は、下記サイトも併せてご確認ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます! ほんのちょっとでも、あなたの福知山スキ度が上がっていたらうれしいです!また読みに来てください!